HOLISM AND PSYCHOANALYSIS:DIFFERENTIAL THINKING(全体性と精神分析:微分的思考)“Ego, Hunger and Aggression” Fritz Perls|ゲシュタルト療法

Ego Hunger Aggression ゲシュタルト療法

Ego, Hunger and Aggression: A Revision of Freud’s Theory and Method  THE GESTALT JOURNAL PRESS Copyright © 1947, 1968 by Frederick S. Perls

第一章「全体性と精神分析」から、「微分的(差異的)思考」についてのノート。

INTENTION 目的

・生物は欲求によって絶えず乱されるバランスを維持しようと努力し、欲求を満たすか排除することによって回復している

・個人と社会との間に生じる困難は、結果として非行や神経症を生み出すことになる。ノイローゼは、主に接触回避を中心とした様々な形態の回避によって特徴づけられる

・精神分析は、無意識と性本能、過去と因果関係、連想、転移、抑圧の重要性を強調するが、自我と飢餓本能、現在と目的性、集中、自発的反応、レトロフレクションなどの機能を過小評価するか無視する

・神経症の中心的な症状は回避であるとされているため、私は自由連想やアイデアの逃避という方法を、回避の解毒剤である集中に置き換える

PART I HOLISM AND PSYCHOANALYSIS 全体性と精神分析

I DIFFERENTIAL THINKING 微分的思考

・フロイトの研究は独創的かつ刺激的で、人間の諸活動に体系的な心理学理論をもたらしたが、その欠点もある。

(a) In the treatment of psychological facts as if they existed isolated from the organism
 心理学的事実を生物から切り離された存在として扱っているところ
(b) In the use of the linear association-psychology as the basis for a four-dimensional system
 四次元的なシステムの基礎として、線形連合心理学を用いているところ
 【つまりフロイトは心(意識・無意識)をリニアに理解しようとしたということ?】
(c) In the neglect of the phenomenon of differentiation
 分化(differentiation)という現象をないがしろにしているところ

・この精神分析の改訂において、私(パールズ)は次のことを意図している

(a) To replace the psychological by an organismic concept (I.8).
 心理学的なものを有機的な概念に置き換える
(b) To replace association-psychology by Gestalt-psychology (I.2).
 連合心理学をゲシュタルト心理学に置き換える  
(c) To apply differential thinking, based upon S. Friedlaender’s “Creative Indifference.
 フリードレンダーの「創造的無関心」に基づいて微分的(差異的)思考を適用する

・In his book Creative Indifference, Friedlaender brings forward the theory that every event is related to a zero-point from which a differentiation into opposites takes place. These opposites show in their specific context a great affinity to each other. By remaining alert in the center, we can acquire a creative ability of seeing both sides of an occurrence and completing an incomplete half. By avoiding a one-sided outlook we gain a much deeper insight into the structure and function of the organism.
フリードレンダーは、著書『創造的無関心』の中で、あらゆる事象はゼロ・ポイントに関連し、そこから対立項への分化が起こるという理論を提唱している。そして、その対極にあるものは、特定の文脈の中で、互いに大きな親和性を示すという。中心を意識することで、私たちは物事の両面を見ることができ、不完全な半分を完成させる創造力を身につけることができる。一面的な見方を避けることで、私たちは生物の構造と機能について、より深い洞察を得ることができる。


なんだか前半、Friedlaender の”Creative Indifference”という概念が中心に扱われていて、小難しい感じなのですが、なんせ「ゲシュタルト療法」というキーワードより前に、重要なこととして取り上げられているので、おそらくゲシュタルトにとって鍵となるコンセプトなのだと思います。

とはいえ、フリードレンダーという人は、日本では(数冊訳書があるようですが)ほとんど知られておらず(知らないですよね?、僕だけ?)。

フリードレンダーの言う「創造的無関心(あるいは中庸):Creative Indifference」とは、「あらゆる事象はゼロ・ポイントに関連し、そこから対立項への分化が起こる」という理論、と説明されていました。

Dave Mannの「100のキーポイント」では、
22 Caring and creative indifference
のところの注釈で次のように書かれていました。

5 The term creative indifference can conjure up the wrong impression but if we trace back its roots we see that some of its meaning may have been lost in translation. The original work from which Perls (1947) and PHG (1951) developed the concept, Schöpferische Indifferenz by Salamo Friedlaender (1918), was never translated but is better rendered into English as ‘creative undifferentiation’ rather than ‘indifference’, with its negative connotations (Wheeler, 1991: 47).
創造的無関心という言葉は間違った印象を与えるかもしれないが、そのルーツをたどってみると、その意味の一部が翻訳で失われている可能性があることがわかる。Perls (1947) と PHG (1951) がこの概念を発展させた原著、Schöpferische Indifferenz by Salamo Friedlaender (1918) は翻訳されなかったが、英語ではネガティブな意味合いを持つ「indifference」ではなく、「creative undifferentiation」と表記したほうがよい(Wheeler, 1991: 47)。

とWheelerさんは述べているようです。

この後、ヘーゲルとかマルクスの名前が出てきて、パールズが何を言いたいのかよく分からないのですが(パールズも、「理論的なことばっかり言ってるから読者も抵抗があるだろうけど」と書いていました)、たぶん次のようなことだと理解しました。

・「心理学は、他のどの科学よりも、観察者と観察された事実が不可分」であるので、観察者は包括的で歪みのない視野を得ることが大切だ。

・そのような視点は、フリードレンダーによって見出された。『創造的無関心』には、あらゆる事象はゼロポイント(zero-point)に関連しており、そこから対立項への分化が起こると書かれている。対立項は、特定の文脈において、お互いに大きな親和性を示している。中心に注目することで、私たちは物事の両面を見ることができ、生物の構造と機能についてより深い洞察を得ることができる。

・The situation, the “field,” is a decisive factor in the choice of the zero-point.
状況、つまり「場」が、ゼロ・ポイント選択の決め手となる。

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