神経心理学

統合失調症におけるワーキングメモリ

ワーキングメモリーには、「この思考は誰かが私に言ったものか、それとも私自身が考えたものか」といった頭の中に存在する情報の出展に関するものも含まれる。

ということで、ワーキングメモリーの障害は、統合失調症に大きな問題を引き起こす認知機能障害の1つとされています。実行機能とも関係していると考えられています。

数唱は、健常者と比べてスパンが平均して1項目少なくなります。また、逆唱や語音整列などのより複雑な「ワーキング」要素が入ったスパン課題では、より重い障害が示されることが多いのです。

外部由来情報と自己生産情報の混乱は、統合失調症における幻覚と妄想の発言の理論のいくつかでは非常に重要なものである(Keefe, 2000)。自己の経験のモニタリング(すなわち自己認識過程)は、健常な認知機能において非常に重要である。これは、外部の出来事と内部の経験を区別し、その基本的なレベルでは位置や動作、身体の向きといった現在の身体についての要素のモニターを助ける。

聞いた情報と、頭に浮かんだ情報の区別がうまくできない、モニタリングできないということが、幻聴の原因のひとつと言えるのではないかとのことでした。

「うそをつくのが苦手」とか「まったく話題にしたことのないはなしを、あたかも前に話したかのように言及する」といった、統合失調症の患者さんによくあることも、同じ理由から説明できるのでしょう。
統合失調症の認知機能ハンドブック―生活機能の改善のために

ベンダー・ゲシュタルト・テスト

ベンダー・ゲシュタルト・テスト(Bender Gestalt Tet, Beder Visual Motor Gestalt Test)

ベンダー・ゲシュタルト・テスト(Bender Gestalt Tet, Beder Visual Motor Gestalt Test)は、ベンダー(Bender,L.)が1938年に考案した心理検査で、はがき大の9枚の幾何学図形を1枚の用紙に模写するという課題。

Lauretta Bender

Lauretta Bender(1897-1987)

用いられている図形は、ゲシュタルト心理学を作ったヴェルトハイマー(Weltheimer)によるものだ。ヴェルトハイマーは、人間が物を近くするときにゲシュタルト(全体をもったまとまりのある構造)として知覚する原理を研究した。「近接の要因」「閉合の要因」「よい連続の要因」といた「プレグナンツ(簡潔さ)の法則」を提唱している。

Lauretta Bender

ローレッタ・ベンダーは、モンタナ州のビュートという町に生まれた。学校での適応に問題があったようで、小学1年生を3回もしたとwikipediaに記載されていた。読み書きが困難で、逆さ文字などを書いていたため、知的障害があると考えられていたという。父親が彼女のディスレクシア(読字障害)の克服の手助けをし、後にアイオワ州立医科大学で医師となった。

ベンダーは、ジョン・ホプキンス病院でポール・シルダー(Paul Schilder)という精神分析家と出会い、恋に落ちた。シルダーは結婚していたが、後に離婚して、1936年にベンダーと再婚したとのこと。3人の子どもをもうけたが、シルダーは交通事故で亡くなってしまった。ベンダーは70才のときにHenry B. Parkesというニューヨーク大学の歴史学の教授と再婚した。

第二次世界大戦とベンダー・ゲシュタルト・テストの発展

ベンダー・ゲシュタルト・テストは、第二次世界大戦で数多く見られた戦争神経症や心因反応、器質的な疾患を短時間でスクリーニングするための心理検査として発展した。

兵士の適性を見るためのテストとしても用いられたという。

ベンダーは解釈の基準や採点方法などを残さなかったが、後にPascal Sattel法(成人対象)や、Koppiz法(児童対象)などが考案されている。

視覚的な認知能力や、視覚と運動の協応、構成能力などを見る神経心理学検査として用いられることが多いが、投映法的な見方をすることもある。

ベンダー・ゲシュタルト・テストにおける 日本人の標準値:文献的検討[pdf]

で日本人の標準値を知ることができるが、年齢や研究によって幅が広すぎるのがやや使いにくい。

 
Bender Gestalt Screening for Brain Dysfunction

この本の採点システムだと、「回転」や「単純化」「断片化」といった12項目のうち、全体で何項目該当するかということだけでスクリーニングできるが、日本人対象には標準化されていない。

中野光子『高次脳機能診断法』山王出版、2002年

では、点数化してしまうと質的な分析ができないという理由で、あえて数量化せずに解釈すると書かれていた。それもありだと思う。

Bender Visual-Motor Gestalt Test, Second Edition (Bender-Gestalt II)

現在、アメリカではベンダー・ゲシュタルト・テストの改訂版(BGTⅡ)が使用されているようだ。こちらは16の図形が含まれている。検索して調べてみると、透視立方体や主観的輪郭の図形が含まれていて、より難易度が上がっている。

しかし16枚だとさらに使いにくいような気もする。