心理アセスメント

ADHDのチェックリスト(ASRS)について

注意欠陥・多動性障害(ADHD)とは

注意欠陥・多動性障害(Attention-deficit/hyperactivity disorder:ADHD)は、多動や衝動性、不注意といった特徴をもつ発達障害のひとつ。中枢神経系の未成熟さやなんらかの偏りに寄ると考えられている。通常、小児期から認められ、一般的には脳の成熟とともに多動性や衝動性は目立たなくなっていくことが少なくない。しかし、成人期でも2~2.5%にADHDが認められる(学齢期のADHD有病率は3~5%)。

小児期では、学習障害や発達性協調障害、反抗挑戦性障害、素行障害などの合併が見られることがある。成人期においては、気分障害や不安障害、物質関連障害が併発することも。

多動性、衝動性は大人になると収まることが多いが、不注意は持続しやすく、日常生活や仕事などの社会生活で「ミスが多い」「約束を忘れる」といった現象として現れて問題となることがある。

成人期のADHDの自己記入式症状チェックリスト(ASRS-v1.1)

ASRSは、世界保健機関(WHO)で作成された成人期のADHDのスクリーニングのための自己記入式症状チェックリスト。5分程度の時間で実施できる。

大人のADHD症状チェックリスト:成人(18歳以上)用

pdf版はこちら

英語版は以下。

Adult ADHD Self-Report Scale (ASRS-v1.1) Symptom Checklist[pdf]

ASRSのパートAの診断テストとしての評価では、感度 68.7%、 特異度99.5%と報告されている。

感度と特異度とは、ある疾患について、その検査が疾患のあるなしをどれくらい正しく判定できるかということを示す指標。

感度とは、病気をもっている人のなかで、その検査で陽性と出る割合を指す。つまり、検査の感度が高いということは、その疾患(この場合ではADHD)の患者の大部分が検査で陽性となるということ。ASRSの感度68.7%という数字は、それほど高いわけではないのか。3分の1くらいのADHDの人がひっかからない。

特異度とは、その疾患をもっていない人の中で、検査でも陰性と出る人の割合。ASRSは特異度が高い。つまり、この検査で陽性と出れば、ADHDをもっている可能性が高いということ。参考「感度と特異度

ということだが、調べてみた限りではこのチェックリストは日本人を対象に標準化されているわけではなようだった。

 

参考
ASRSを翻訳した武田俊信先生のサイトに資料がありました。

武田俊信研究室

原著版の紹介動画。

ADHD CME: Screening for Adult ADHD with ASRS Technology , ADHD in Adults

 

【追記:2017.5.12】

「大人の発達障害」6つの質問でわかる 「会議で席を立つ」「人の話が聞けない」

という記事を見たら、ASRS、最近、「DSM-5」に即した内容にアップデートされたようです。

(1)直接話しかけられているにもかかわらず、相手の話の内容に集中することが難しいと感じることがあるか。
(2)会議などの着席していなければならない状況で、席を離れてしまうことがあるか。
(3)余暇などで時間に余裕がある時でも、一息ついたり、ゆったりとくつろいだりすることが難しいことがあるか。
(4)会話を交わしている相手の話がまだ終わっていないのに、会話をさえぎったり、途中で割り込んだりして相手の話を終わらせてしまうことがあるか。
(5)しなくてはいけない物事をギリギリまで先延ばしすることがあるか。
(6)日々の生活をスムーズに送るために、誰かに依存することがあるか。

との6項目で、(6)などは新しく追加されていますね。

(1)全くない(2)ほとんどない(3)時々ある(4)よくある(5)非常によくある、の5段階で解凍してもらい、全くないが0点、(2)~(5)は項目ごとに2~5点の範囲で加点され、合計点で評価されます。カットオフポイントについては、書かれてないですね。

わずか6問で成人期ADHD患者を発見米グループがDSM-5版のスクリーニングツールを作成

などでも紹介されていました。

ソースは、

JAMA Psychiatry誌に掲載された

The World Health Organization Adult Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder Self-Report Screening Scale for DSM-5. 2017 May 1;74(5):520-526

です。

 

うつ病評価尺度MADRS

モントゴメリー‐アスベルグうつ病評価尺度(Montgomery-Asberg Depression Rating Scale:MADRS)日本語版

うつ病の重症度を評価するための尺度。Hamiltonうつ病評価尺度は、身体的要因などの要因も含まれているが、このMADRSは、うつ病の中核的な精神症状を評価できるように作成された(抑うつ症状とanhedoniaの評価が中心)。

うつ病の重症度の変化に鋭敏なので、抗うつ薬の薬効の比較などをとらえるのに適しているとのこと。うつ病の診断のための尺度ではなく、うつ病と診断された患者さんの重症度の変化をアセスメントするために用いる。

MADRSは、Asbergらが1978年に航海した包括的精神病理学評価尺度(Comprehensive Psychopathological Rating Scale:CPRS)から抑うつを評価する10項目を抜き出して作成された。

MADRSを使いこなす

F3:うつ病 評価尺度(MADRSなど) (精神科臨床評価検査法マニュアル〔改訂版〕) — (精神科臨床評価–特定の精神障害に関連したもの) Rating scale for depression (especially MADRS)

双極性障害の認知機能障害

双極性障害の患者さんにときどき見られる認知機能障害や人格水準の低下について。

私も統合失調症と双極性障害は「同じような病理が重なっている可能性がある」と感じています。それを強く意識したのは、双極性障害の患者さんが病相を繰り返し、生活機能の低下を来したケースを診てからです。かつて「気分障害は機能低下を起こさない」とされてきましたが現実はそうでなく、統合失調症の重症例と同じ経過をたどることがある。産業医としても、双極性障害の方が病相をくり返すことで機能低下を来し、50代以降に中途退職してしまうケースにはよく遭遇します。もちろんそうではない患者さんもたくさんいますが、こういった経験からやはり両疾患に親和性はあるのかと考えるようになりました。統合失調症と双極性障害、その共通点と差異を探る

少し前に、こんな話を医局の先生とした。

近年,うつ病や双極性障害などの気分障害における認知機能障害が注目されている。認知機能障害は患者の日常生活や社会機能に影響を及ぼし,症状寛解後にも認知機能障害が残存する場合は再燃・再発のリスクも高くなることが懸念される。(…)統合失調症では認知機能の領域(ドメイン)のうち「精神運動速度」,「言語性記憶」,「注意」,「言語流暢性」,「視覚構成記憶」,「実行機能」が健常者と比較して低下しています。双極性障害においても,統合失調症よりも軽度ですが,同様の認知機能領域の障害が報告されています。気分障害における認知機能障害

統合失調症認知機能簡易評価尺度(BACS)を使った評価でも、双極性障害にも統合失調症と共通した認知機能の低下が見られたとのこと。

COGNISTATという認知機能検査を使って、気分障害の人たちの認知機能を調べた研究もあった。

気分障害の神経心理学的特徴 -日本版COGNISTATによる認知機能評価から-[pdf]

健常群と比較して、気分障害群のCOGNISTAT の平均得点は有意に低く、全般的に認知機能が低下している可能性がある。

下位検査項目では「注意」、「記憶」、「類似」が健常群より低かった。注意、記憶機能や、類似課題に反映される抽象的思考・合理的思考・問題解決能力などに低下がみられることが示唆された。

 

 

絵画配列、動作性IQと自閉症スペクトラム指数

自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder;ASD)の患者30人を対象に、Wechsler式知能検査(WAIS-Ⅲ)と自閉症スペクトラム指数(AQ)を実施し、その関連を検討した研究。

ASD患者のWAIS-Ⅲでは言語に関する認知機能が他の認知機能に比べて高かった。さらにWAIS-Ⅲの動作性IQや絵画配列とAQの注意の切り替えやコミュニケーションの間に正の相関がみられた。すなわち予想されるのとは逆に,動作性IQや絵画配列の能力が高いほど主観的には困難を強く自覚していることが示唆された。

成人高機能自閉症スペクトラム障害におけるWechsler式知能検査と自閉症スペクトラム指数との関連, 精神医学

生育史や現在の困難、WAIS-Ⅲなどの心理検査にはかなりはっきりASDの特徴が表れているのに、AQなどの自己申告の質問紙ではまったくそうした特徴や困難を自覚していない人たちも確かに多い。

いわゆる「積極奇異型」と呼ばれるような人のなかには、「自分は社交的でコミュニケーションが得意だ」と体験している場合もあるので、周囲の受け取り方とズレが大きいのだろう。