ティル・ワイクス,クレア・リーダー著/松井三枝監訳『統合失調症の認知機能改善療法』金剛出版、2011年

書店で見かけて少しめくってみたので、覚書として。

診断確立の時代,クレペリンやブロイラーらによって光を当てられた統合失調症の認知機能障害は,幻聴・妄想といった陽性症状への対処のなかで,「変化しない症状」としてながらく臨床的に省みられることがなかった。精神科医療が地域移行の時代をむかえ,当事者の主体的な生活のためのリハビリテーションが志向される中で,記憶・思考・注意といった認知機能の改善がにわかにクローズアップされてきた。日常生活や就労・就学において必要なのは,一人ひとり固有の希望を実現していくための応用力の改善である。認知機能改善療法(Cognitive Remediation Therapy : CRT)はメタ認知に注目し,個別状況をこえて生活スキルを改善する(スキルの転移)ための包括的なリハビリテーションプログラムであり,良好な治療関係の中で自己効力感と自尊心を回復する心理療法である。

とある。

実際にどんなことをするかというと、たとえば「前頭葉・実行機能プログラム(FEP)」などを行うようだ。

前頭葉・実行機能プログラム(FEP) ~認知機能改善のためのトレーニング実践セット~

前頭葉・実行機能プログラム(Frontal/Executive Program:FEP)とは、オーストラリアで開発された統合失調症の患者を対象とした認知機能改善療法(CRT)だそうだ。セラピストと患者がマンツーマンで1セッション1時間かけて、計44セッション行う。紙と鉛筆を使った課題や、手の運動、積木を色、形、大きさで分けるといったさまざまな課題が含まれていて、だんだん難易度が高くなっていくように設定されている。

統合失調症以外にも、発達障害、学習障害、ADHD、健忘症、認知症、物質関連障害、気分障害、衝動制御障害、脳外傷、脳卒中、脳腫瘍、てんかん、犯罪者など、幅広く適応できるだろうとのこと。

慢性期統合失調症患者に対する認知機能改善療法(CRT) : 前頭葉/実行機能プログラム(FEP)による実践的研究

によると、

FEP は認知的柔軟性(cognitive flexibility),ワーキングメモリ(working memory),計画(planning)という 3 つのモジュールで構成されており,課題内容はセッションが進むにつれて複雑さが増すように作成されている。各モジュールは眼球運動や知覚,情報の組織化,巧緻運動などから構成されている 。

とのことで、「 FEP が慢性期統合失調症患者の認知機能,社会機能および精神症状を改善することが示され,CRT の 1 つのツールとして有用であると考えられた。FEP は医療機関をはじめとして多くの施設において実施が容易なプログラムであると考えられる」という結論。