『認知行動療法で改善する不眠症』

不眠の訴えは心理士もよく聴くだろう。

「主治医の先生にお薬のこと、 相談してみてください」と言う以外の役に立つ情報提供やサポートのための参考書。

実は、睡眠に対する「不安」や「思い込み」こそが、不眠を悪化させる大きな原因です。安全で副作用がなく、薬とほぼ同等の効果がある認知行動療法により、睡眠に対する理解を深め、こだわりを正しく治して慢性不眠症を改善する方法を解説。

認知行動療法で改善する不眠症
岡島 義, 井上 雄一『認知行動療法で改善する不眠症』、すばる舎、2012年

不眠についての心理教育や、睡眠日誌のつけ方、認知行動療法の実際やその効果と限界について書かれている。

不眠を維持するのは、

  1. 行動的特徴:運動や生活習慣、飲酒、寝床での習慣など
  2. 認知的特徴:「ちゃんと眠れるか」と心配したり、考えすぎたり
  3. 身体的特徴:体温リズムや体内時計、緊張状態

などの要因。

睡眠日誌を通じて、睡眠を適切なものに調整していく。

アテネ不眠尺度

ピッツバーグ睡眠質問票

『不眠の科学』 付録 2 不眠の認知行動療法 実践マニュアル[pdf]

 

 

 

『筆記療法 トラウマやストレスの筆記による心身健康の増進』

S.J.レポーレ+J.M.スミス編、余語真夫他訳『筆記療法 トラウマやストレスの筆記による心身健康の増進』北大路書房、2004年

書くことの効用に関する本。

5000年前・・・シュメール人によるくさび形文字の発明

筆記は個人や社会全体の感情と思考、そして行動に著しい影響を及ぼしてきた。(p3)

本書はストレスフルな生活経験の文脈や余波において人間の経験をポジティブなものに形づくったり、作りなおしたりする筆記の力について検討する。(p3)

ストレスやトラウマが健康とウェルビイングに及ぼす有害効果を弱めるための治療法としての筆記

表現療法としての筆記療法

筆記表現と血圧

3日間毎日20分間、トラウマティックな出来事を含む生活上のいくつかの問題を書くよう求められた群は、血圧が低下する傾向が見られた(Crow et al, 2001)。

高血圧の集団のパーソナリティ特徴として、過去と未来の出来事を制御することができないとみなす傾向がある(「服従性」が高い)。それが「脅威」の知覚と受動的な対処を導き、自律神経系のいっそうの興奮をもたらす可能性。

筆記表現は、脅威の知覚や無力感の低減に役立つ。

筆記による表現は、社会的な反響を起こさずに認知的再体制化や情動表出のはけ口となることにより、重要な社会的機能を果たすかもしれない。(p.25)

情動表出、筆記療法と癌

癌の患者による情動表出と、筆記療法の効果に関する研究が紹介されている。

癌の発症に関するメタ分析では、「感情を表出しない傾向がリスクになりうる」ことが示唆されている。いわゆる「タイプC」か。「ネガティブ情動を統制せずに発散すること」は不適応と関連しているが、「情動を表出する意図的な努力」は有益な効果を生み出す。「支持的な文脈のなかで情動を表出すること」がポジティブな効果をもたらすだろう。

情動の筆記と健康

筆記表現法が健康に及ぼす効果の情動調整モデル(p.101)

筆記表現→調整過程(注意、純化、認知的再体制化)→情動システムにおける調整結果(主観的–体験的 神経生理学–生化学的 行動–表出的)→精神的・身体的健康

ストレスと筆記表現とワーキングメモリ

ストレスはワーキングメモリに影響する。筆記表現法はワーキング・メモリ容量の向上をもたらす。

筆記表現が認知過程と行動に及ぼす効果についてのモデル(p.139)

ストレス→認知過程→行動と健康

ストレスフルな記憶は、断片的で、体制化が不十分な構造として貯蔵されている。

この構造はこれら(記憶)にアクセスしやすくする

アクセス可能な記憶は侵入しやすく、ワーキング・メモリ資源を消費するので抑制されなければならない

ワーキング・メモリ資源が目標に関係した操作に使用できないので、推論(reasoning)や問題解決能力が低下する

なるほど。ストレスフルな記憶は、机の上に散乱している状態なので目につきやすいということか。

筆記表現

ストレスフルな経験の記憶構造がより一貫し、体制化される

これら体制化された構造はワーキング・メモリ資源をめぐって競合しにくくなる

問題解決が促進される
コーピングが促進される
その結果、健康状態が改善する

という仕組み。

その他、インターネットを用いた筆記表現法やワークブックの使用についてなど、筆記療法に関する最近の研究が紹介されていました。
筆記療法―トラウマやストレスの筆記による心身健康の増進

紙ペンゲーム「詠み人知らず」

『紙ペンゲーム30選』という楽しい本に載っていた「詠み人知らず」という言葉遊びが、無口な人、あるいは緘黙の人と関わるときに、描画や箱庭以外のアプローチとして使えると思ったのでメモしておきます。

「詠み人知らず」は、五・七・五の俳句、もしくは川柳(あるいはごもじもじ)を、何人かで共同製作するという言葉遊びです(詠み人知らずのグループでの遊び方)。これを、二人のセラピー場面で使ってみます。

二人で紙に一文字ずつ記入して、五・七・五とつながったら一句できた。

「連句」だと、一人で一句作るのがハードル高いが、これだととりあえず一文字だけつなげたらいいでしょう(連句セラピーも面白いけれど)。

言葉を使わないほうが、「どんな句を作ろうとしているのかな」「そうきたか」といった無言のやりとりが生まれて面白いのです。妙な句ができたら、それはそれで笑いが生まれます。

スクイグルや交互分割法の言葉版とも言えますね。

あるいは、相互ウォッチワード・テクニック (Mutual Watchword Technique)[pdf]のほうが近いかもしれません。

手軽で、あまり侵襲的ではなくて、それでいて何か達成感がある関わりといった遊びです。

 

大人が楽しい紙ペンゲーム30選

 

絵画配列、動作性IQと自閉症スペクトラム指数

自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder;ASD)の患者30人を対象に、Wechsler式知能検査(WAIS-Ⅲ)と自閉症スペクトラム指数(AQ)を実施し、その関連を検討した研究。

ASD患者のWAIS-Ⅲでは言語に関する認知機能が他の認知機能に比べて高かった。さらにWAIS-Ⅲの動作性IQや絵画配列とAQの注意の切り替えやコミュニケーションの間に正の相関がみられた。すなわち予想されるのとは逆に,動作性IQや絵画配列の能力が高いほど主観的には困難を強く自覚していることが示唆された。

成人高機能自閉症スペクトラム障害におけるWechsler式知能検査と自閉症スペクトラム指数との関連, 精神医学

生育史や現在の困難、WAIS-Ⅲなどの心理検査にはかなりはっきりASDの特徴が表れているのに、AQなどの自己申告の質問紙ではまったくそうした特徴や困難を自覚していない人たちも確かに多い。

いわゆる「積極奇異型」と呼ばれるような人のなかには、「自分は社交的でコミュニケーションが得意だ」と体験している場合もあるので、周囲の受け取り方とズレが大きいのだろう。

 

 

ベンダー・ゲシュタルト・テスト

ベンダー・ゲシュタルト・テスト(Bender Gestalt Tet, Beder Visual Motor Gestalt Test)

ベンダー・ゲシュタルト・テスト(Bender Gestalt Tet, Beder Visual Motor Gestalt Test)は、ベンダー(Bender,L.)が1938年に考案した心理検査で、はがき大の9枚の幾何学図形を1枚の用紙に模写するという課題。

Lauretta Bender

Lauretta Bender(1897-1987)

用いられている図形は、ゲシュタルト心理学を作ったヴェルトハイマー(Weltheimer)によるものだ。ヴェルトハイマーは、人間が物を近くするときにゲシュタルト(全体をもったまとまりのある構造)として知覚する原理を研究した。「近接の要因」「閉合の要因」「よい連続の要因」といた「プレグナンツ(簡潔さ)の法則」を提唱している。

Lauretta Bender

ローレッタ・ベンダーは、モンタナ州のビュートという町に生まれた。学校での適応に問題があったようで、小学1年生を3回もしたとwikipediaに記載されていた。読み書きが困難で、逆さ文字などを書いていたため、知的障害があると考えられていたという。父親が彼女のディスレクシア(読字障害)の克服の手助けをし、後にアイオワ州立医科大学で医師となった。

ベンダーは、ジョン・ホプキンス病院でポール・シルダー(Paul Schilder)という精神分析家と出会い、恋に落ちた。シルダーは結婚していたが、後に離婚して、1936年にベンダーと再婚したとのこと。3人の子どもをもうけたが、シルダーは交通事故で亡くなってしまった。ベンダーは70才のときにHenry B. Parkesというニューヨーク大学の歴史学の教授と再婚した。

第二次世界大戦とベンダー・ゲシュタルト・テストの発展

ベンダー・ゲシュタルト・テストは、第二次世界大戦で数多く見られた戦争神経症や心因反応、器質的な疾患を短時間でスクリーニングするための心理検査として発展した。

兵士の適性を見るためのテストとしても用いられたという。

ベンダーは解釈の基準や採点方法などを残さなかったが、後にPascal Sattel法(成人対象)や、Koppiz法(児童対象)などが考案されている。

視覚的な認知能力や、視覚と運動の協応、構成能力などを見る神経心理学検査として用いられることが多いが、投映法的な見方をすることもある。

ベンダー・ゲシュタルト・テストにおける 日本人の標準値:文献的検討[pdf]

で日本人の標準値を知ることができるが、年齢や研究によって幅が広すぎるのがやや使いにくい。

 
Bender Gestalt Screening for Brain Dysfunction

この本の採点システムだと、「回転」や「単純化」「断片化」といった12項目のうち、全体で何項目該当するかということだけでスクリーニングできるが、日本人対象には標準化されていない。

中野光子『高次脳機能診断法』山王出版、2002年

では、点数化してしまうと質的な分析ができないという理由で、あえて数量化せずに解釈すると書かれていた。それもありだと思う。

Bender Visual-Motor Gestalt Test, Second Edition (Bender-Gestalt II)

現在、アメリカではベンダー・ゲシュタルト・テストの改訂版(BGTⅡ)が使用されているようだ。こちらは16の図形が含まれている。検索して調べてみると、透視立方体や主観的輪郭の図形が含まれていて、より難易度が上がっている。

しかし16枚だとさらに使いにくいような気もする。

 

アルコール問題のスクリーニングテスト5選

アルコール依存症などの状態を客観的に把握するためのスクリーニングテストなどの覚書。

アルコール関連問題FACT

  • アルコール依存症の推計患者数は58万人(2013年の全国調査)
  • 3年断酒率は18~33%
  • 死亡率は15~23%
  • 依存症として治療を受けている患者数は年間5万人前後にすぎない

飲酒問題が深刻化するにつれて否認や隠ぺいが強まる→早期発見・早期介入が必要

問題飲酒の程度

  1. 危険な飲酒(hazardous drinking)
  2. 有害な飲酒(harmful drinking)
  3. アルコール依存症(alcohol dependence)

生活習慣病のリスクを高める飲酒量:男性で40g、女性で20g以上(いずれも一日あたり、純アルコール摂取量)
厚生労働省

アルコール使用障害スクリーニングテスト

CAGE

4項目の頭文字をとって「ケイジ」と読む。

  1. 飲酒量を減らさなければいけないと感じたことがありますか(Cut down)
  2. 他人があなたの飲酒を非難するので気にさわったことがありますか(Annoyed by criticism)
  3. 自分の飲酒について悪いとか申し訳ないと感じたことがありますか(Guilty feeling)
  4. 神経を落ち着かせたり,二日酔いを治すために, 「迎え酒」をしたことがありますか(Eye-opener)

上記のうち2項目以上あてはまれば、スクリーニング上アルコール依存症とされる(久里浜医療センター)。

感度77.8%、特異度92.6%とのこと。

新久里浜式アルコール症スクリーニングテスト(KAST)

日本でよく使われているスクリーニングテスト。「カスト」と読む。初版は1976年に標準化され、2008年に新バージョンに改訂された。男性版(KAST-M)は10項目、女性版(KAST-F)は8項目からなる。

KAST@久里浜医療センター

AUDIT(The Alcohol Use Disorders Identification Test)

WHOの6か国調査(1982年~)に基づいて1989年に作成され、1992年に改訂版が出版された。AUDIT(オーディット)は、現在の飲酒習慣が適切なものなのか、あるいは健康への被害や日常生活への影響が出るほど問題のあるものなのかを確認するためのスクリーニングテスト。プライマリケアでよく用いられる。

AUDIT@KIRIN

CRAFFT

若者を対象としたアルコール・薬物使用障害のスクリーニング。CRAFFTという名称は、Car, Relax, Alone, Forget, Family, Troubleの頭文字に由来しているとのこと。

CRAFFT スクリーニングインタビュー 

CIWA-Ar

離脱症状の重症度の評価。

CIWA-Ar – JHospitalist Network

 

真栄里仁・樋口進「F1:アルコール関連障害」『臨床精神医学』第44巻増刊号:303‐313, 2015

飲酒のガイドライン | e-ヘルスネット 情報提供 – 厚生労働省

 

 

 

 

 

解離と空想傾向パーソナリティ

Wilson & Barber(1983)は、催眠反応性の高い女性たちに見られる記憶や空想、体験の特徴を「空想傾向(fantasy-proness)」と名づけた。

以下、柴山先生による解離と空想傾向に関する文章から。

  • 空想傾向は一般人口の4%にみられると推定
  • 空想に対して広く深く没入する
  • 創造的な才能でもある
  • トランス状態のような深い意識変容を経験しやすい
  • 幼児期の多くの時間、彼女たちは架空の世界に住んでおり、人形が生きているものと信じ、妖精や守護天使も実在すると思っている
  • 想像上の友達(IC:imaginary comanion)の体験
  • 孤児や王女、動物などになりきることも多い
  • 普通の少女のふりをしているが実際は王女であると感じていることも
  • 物語の世界への没入
  • 小学生頃になると、周りから嘘をついていると言われたり、からかわれたりするため、そうした空想を人には言わなくなることが多い

空想傾向に導く要因としては、

  1. 大人が子どもに空想することを促した
  2. 孤独な状況
  3. 困難でストレスの多い環境からの逃避
  4. 幼児期からの芸術領域の過剰な練習

などが挙げられている。

「家族からの身体的虐待、母親の重度の情緒障害、ネグレクト、里親を転々とするなどの不安定な居住状況は空想傾向者の1/3にみられた」とのこと。

空想傾向者は成人になっても、多彩で創造的な空想を体験している。

「鳥や気を見れば、突然に体の感覚を憂いなって自分が鳥や木になる。日常的な仕事をしているときに、あたかも別のところで別のことをしていると空想する」「空想があまりに現実的であるため、85%の人が空想の記憶と次歳の出来事の記憶を混同しがちであると報告している」。

Merckelbachら(2001)による空想傾向の尺度があるとのことで調べてみた。

CEQ:Creative Experiences Questionnaire[pdf]

25項目の2件法の尺度で、「子どもの頃、人形やテディベアや動物のぬいぐるみなどの遊んでいたものは、生きているのだと思っていた」といった項目がある。

 

ラース・フォン・トリアー監督、ビョーク主演の『ダンサー・イン・ザ・ダーク』の主人公セルマがまさに空想傾向パーソナリティといっていいような人柄だった。

Fantasy prone personality(Wikipedia)

柴山雅俊「幼少期の解離体験」『臨床心理学』第13巻第4号、2013年7月

 

自閉症スペクトラム障害におけるスクリーニングと診断

自閉症スペクトラム障害(ASD)のスクリーニングと診断アセスメントについてのメモとリンク。

1次スクリーニング

たとえば検診などにおいて、多人数でも実施可能なチェックリストなどが中心。

・M-CHAT(乳幼児期自閉症チェックリスト修正版)

16か月~30か月の用事を対象に、視線追従や叙述の指さしなどの共同注意行動を中心とした23項目から構成されている。

「何かに興味を持った時、指をさして伝えようとしますか?」
「あなたに見てほしいモノがある時、それを見せに持ってきますか?」
「あなたが見ているモノを、お子さんも一緒に見ますか?」

など。

[PDF]自閉症スペクトラム障害(ASD)の早期診断への M-CHAT の活用 

[PDF]日本語版 M-CHAT – 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター

・SCDCチェックリスト(対人コミュニケーション障害チェックリスト)

児童・生徒を対象とした、他者の感情の理解、自身の感情表現や対人行動に関する12項目。

・児童精神科医以外の医療機関からの紹介

・周囲や本人の気づき

2次スクリーニング

・AQ(自閉症スペクトラム指数)

[PDF](AQ)日本語版について

自閉症スペクトラム指数 (AQ) 日本語版の標準化 高機能臨床群と健常成人による検討

 自閉症スペクトラム指数とワーキングメモリ容量の関係:定型発達の成人における自閉性障害傾向

AQ高群では低群よりも視空間ワーキングメモリ容量が小さかった.全参加者による相関係数でも,AQと視空間ワーキングメモリ容量の間には負の相関が認められた.しかし,音韻,実行系ワーキングメモリ容量とAQの間には関係が見られなかった.これらの結果は,自閉性障害者で見られる認知特性が,定型発達の成人の自閉性障害傾向でも同様に関わっていることを示唆している.

なるほど。

“社会的失言 (faux pas)” 検出課題と 自閉症スペクトラム指数の臨床的適用に関する考察[pdf]

〈ミチル君はトシヒコ君の誕生日プレゼントにおもちゃの飛行機をあげました。数ヶ月後、二人は一緒にその飛行機で遊んでいました。そのとき、ミチル君は飛行機を落としてしまい、飛行機は壊れてしまいました。トシヒコ君は「気にしないで、これ好きじゃなかったんだ。誰かが僕の誕生日プレゼントにくれたの」と言いました。〉
質問:〈さて、今のお話で、誰か何か言ってはいけないことを言いましたか〉

政治家向けの「社会的失言検出課題」が必要だな。

・AQ児童用

[PDF]児童用AQ (日本語版 )の作成と標準化について

7歳~15歳を対象とした他者評定式、50項目の尺度で、カットオフ値は20点。

・PARS

広汎性発達障害日本自閉症協会評定尺度(Pervasive Developmental Disorders Autism Society Japan Rating Scale)。幼児から成人までを対象に、親や養育者への面接をもとに評定する。

評定項目は、1)対人、2)コミュニケーション、3)こだわり、4)常同行動、5)困難性、 6)過敏性 の PDD に特徴的な 6 領域 57 項目で構成されます。なお、 5)の「困難性」 の項目は、PDD に特有の適応困難特性であり、不器用さや PDD に見られやすい併 発症などを含んでいます。「PARSについて

現在は、 改訂されてPARS-TRになっているよう。詳しくは、スペクトラム社のサイトを。

・SCQ

SCQ(Social Communication Questionnaire)は、ASDの可能性がある対象者の保護者(養育者)が回答する、コミュニケーションと対人機能を評価するためのスクリーニング尺度。「誕生から現在まで」と「現在」それぞれ40項目ずつ。

・CARS

3歳~12歳対象の小児自閉症評定尺度。「新装版」に改訂されているよう。CARS2には、行動観察も含まれる。

 

どのようなスクリーニング検査においても、偽陰性の可能性はある。カットオフ値を下回っていても、ASDの可能性が完全に否定されるわけではない。

ASDの診断・評価用アセスメント・ツール

ADI-R日本語版

ADI-R(Autism Diagnostic Interview-Revised)は、幼児から成人までを対象に、親への半構造化面接で実施される(90~150分程度)。

ADI-R (自閉症診断面接 改訂版)による検証と解釈

ADOS-2

ADOS-2:自閉症スペクトラム評価のための半構造化観察検査。しかし定価55万円って。

 

【参考文献】

黒田美保「発達障害の特性把握のためのアセスメント」『臨床心理学』第13巻第4号、2013年

[PDF]発達障害児者支援と アセスメントに関する ガイドライン – アスペ・エルデの会

 

統合失調症の認知機能改善療法

ティル・ワイクス,クレア・リーダー著/松井三枝監訳『統合失調症の認知機能改善療法』金剛出版、2011年

書店で見かけて少しめくってみたので、覚書として。

診断確立の時代,クレペリンやブロイラーらによって光を当てられた統合失調症の認知機能障害は,幻聴・妄想といった陽性症状への対処のなかで,「変化しない症状」としてながらく臨床的に省みられることがなかった。精神科医療が地域移行の時代をむかえ,当事者の主体的な生活のためのリハビリテーションが志向される中で,記憶・思考・注意といった認知機能の改善がにわかにクローズアップされてきた。日常生活や就労・就学において必要なのは,一人ひとり固有の希望を実現していくための応用力の改善である。認知機能改善療法(Cognitive Remediation Therapy : CRT)はメタ認知に注目し,個別状況をこえて生活スキルを改善する(スキルの転移)ための包括的なリハビリテーションプログラムであり,良好な治療関係の中で自己効力感と自尊心を回復する心理療法である。

とある。

実際にどんなことをするかというと、たとえば「前頭葉・実行機能プログラム(FEP)」などを行うようだ。

前頭葉・実行機能プログラム(FEP) ~認知機能改善のためのトレーニング実践セット~

前頭葉・実行機能プログラム(Frontal/Executive Program:FEP)とは、オーストラリアで開発された統合失調症の患者を対象とした認知機能改善療法(CRT)だそうだ。セラピストと患者がマンツーマンで1セッション1時間かけて、計44セッション行う。紙と鉛筆を使った課題や、手の運動、積木を色、形、大きさで分けるといったさまざまな課題が含まれていて、だんだん難易度が高くなっていくように設定されている。

統合失調症以外にも、発達障害、学習障害、ADHD、健忘症、認知症、物質関連障害、気分障害、衝動制御障害、脳外傷、脳卒中、脳腫瘍、てんかん、犯罪者など、幅広く適応できるだろうとのこと。

慢性期統合失調症患者に対する認知機能改善療法(CRT) : 前頭葉/実行機能プログラム(FEP)による実践的研究

によると、

FEP は認知的柔軟性(cognitive flexibility),ワーキングメモリ(working memory),計画(planning)という 3 つのモジュールで構成されており,課題内容はセッションが進むにつれて複雑さが増すように作成されている。各モジュールは眼球運動や知覚,情報の組織化,巧緻運動などから構成されている 。

とのことで、「 FEP が慢性期統合失調症患者の認知機能,社会機能および精神症状を改善することが示され,CRT の 1 つのツールとして有用であると考えられた。FEP は医療機関をはじめとして多くの施設において実施が容易なプログラムであると考えられる」という結論。

 

精神科臨床における心理アセスメントの六つの視点

精神科臨床における心理アセスメントの六つの視点

津川(2009)が、精神科臨床の経験からまとめた、クライエントを理解するための心理アセスメントの六つの視点とポイント。

Ⅰ.トリアージ

A.自傷他害の程度

B.急性ストレス(悪化しているか)なのか慢性ストレスか

C.トラウマの有無(含むcomplex PTSD)

D.援助への動機や期待の程度

E.いま自分が提供できる援助リソース

Ⅱ.病態水準

A.病態水準と防衛規制

B.適応水準

C.水準の変化

D.知的水準と知的な特徴(とくに、動作性能力)

E.言語と感情のつながり具合

Ⅲ.疾患にまつわる要素

A.器質性障害・身体疾患の再検討

B.身体状況の再検討

C.薬物や環境因(大気など)による影響の可能性

D.精神障害概念の再検討

E.症状をどのように体験しているか

Ⅳ.パーソナリティ

A.パーソナリティ特徴(とくによい資質)

B.自己概念・他者認知を含む認知の特徴

C.ストレス・コーピング

D.内省力の程度

E.感情状態

Ⅴ.発達

A.平均的な発達

B.思春期や青年期の特徴をはじめとする年代ごとの心理的な悩み

C.年代に特有の症状の現れ方

D.発達障害傾向の生むとその程度(発達の偏り)

E.ライフ・プラン

Ⅵ.生活の実際

A.地域的な特徴

B.経済的な面

C.物理的な面(地理、家屋など)

D.生活リズム

E.家族関係を含む対人関係

津川律子『精神科臨床における心理アセスメント入門』金剛出版、2009年