『筆記療法 トラウマやストレスの筆記による心身健康の増進』

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S.J.レポーレ+J.M.スミス編、余語真夫他訳『筆記療法 トラウマやストレスの筆記による心身健康の増進』北大路書房、2004年

書くことの効用に関する本。

5000年前・・・シュメール人によるくさび形文字の発明

筆記は個人や社会全体の感情と思考、そして行動に著しい影響を及ぼしてきた。(p3)

本書はストレスフルな生活経験の文脈や余波において人間の経験をポジティブなものに形づくったり、作りなおしたりする筆記の力について検討する。(p3)

ストレスやトラウマが健康とウェルビイングに及ぼす有害効果を弱めるための治療法としての筆記

表現療法としての筆記療法

筆記表現と血圧

3日間毎日20分間、トラウマティックな出来事を含む生活上のいくつかの問題を書くよう求められた群は、血圧が低下する傾向が見られた(Crow et al, 2001)。

高血圧の集団のパーソナリティ特徴として、過去と未来の出来事を制御することができないとみなす傾向がある(「服従性」が高い)。それが「脅威」の知覚と受動的な対処を導き、自律神経系のいっそうの興奮をもたらす可能性。

筆記表現は、脅威の知覚や無力感の低減に役立つ。

筆記による表現は、社会的な反響を起こさずに認知的再体制化や情動表出のはけ口となることにより、重要な社会的機能を果たすかもしれない。(p.25)

情動表出、筆記療法と癌

癌の患者による情動表出と、筆記療法の効果に関する研究が紹介されている。

癌の発症に関するメタ分析では、「感情を表出しない傾向がリスクになりうる」ことが示唆されている。いわゆる「タイプC」か。「ネガティブ情動を統制せずに発散すること」は不適応と関連しているが、「情動を表出する意図的な努力」は有益な効果を生み出す。「支持的な文脈のなかで情動を表出すること」がポジティブな効果をもたらすだろう。

情動の筆記と健康

筆記表現法が健康に及ぼす効果の情動調整モデル(p.101)

筆記表現→調整過程(注意、純化、認知的再体制化)→情動システムにおける調整結果(主観的–体験的 神経生理学–生化学的 行動–表出的)→精神的・身体的健康

ストレスと筆記表現とワーキングメモリ

ストレスはワーキングメモリに影響する。筆記表現法はワーキング・メモリ容量の向上をもたらす。

筆記表現が認知過程と行動に及ぼす効果についてのモデル(p.139)

ストレス→認知過程→行動と健康

ストレスフルな記憶は、断片的で、体制化が不十分な構造として貯蔵されている。

この構造はこれら(記憶)にアクセスしやすくする

アクセス可能な記憶は侵入しやすく、ワーキング・メモリ資源を消費するので抑制されなければならない

ワーキング・メモリ資源が目標に関係した操作に使用できないので、推論(reasoning)や問題解決能力が低下する

なるほど。ストレスフルな記憶は、机の上に散乱している状態なので目につきやすいということか。

筆記表現

ストレスフルな経験の記憶構造がより一貫し、体制化される

これら体制化された構造はワーキング・メモリ資源をめぐって競合しにくくなる

問題解決が促進される
コーピングが促進される
その結果、健康状態が改善する

という仕組み。

その他、インターネットを用いた筆記表現法やワークブックの使用についてなど、筆記療法に関する最近の研究が紹介されていました。
筆記療法―トラウマやストレスの筆記による心身健康の増進

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